円安と景気のもり返しが効いた
朝日新聞経済部 多田敏男記者
ジャン 「好調な企業の決算があいついでいます」というニュースを見たよ。どういう意味なの。
多田記者 お金がもうかった会社が多い、ということなんだ。会社はモノをつくったり、売ったりしてお金をかせいでいる。決算は、会社が1年間でどれだけかせげたかを表す成績表のようなものだ。
ケン 成績がいい会社が多いんだ。
多田記者 そういうこと。たくさんもうければ、成績がいい、つまり決算がよかったということなんだ。
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円安の追い風を受けている建機大手のコマツは、ブルドーザーなど大型重機を生産する最新設備の工場を立ち上げました=5月30日、石川県小松市
©朝日新聞社
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トヨタ自動車の決算説明会で語る豊田章男社長。決算は、本業のもうけをしめす営業利益が2兆2921億円で、過去最高でした=5月8日©朝日新聞社
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――東京証券取引所第1部、という株式市場で株が売り買いされている大企業について見てみよう。5月20日までに決算を発表した1369社の「純利益」と呼ばれる最終的なもうけは、合計24兆9千億円超と過去最高だった。企業ごとでみても、3割の382社が過去最高だった。成績が「オールA」の企業が続出したんだ。
ジャン すごいわね。
――景気が少しずつ良くなり、モノが売れるようになったことと、外国為替市場で円安になったことが大きい。特に製品をたくさん輸出している自動車や電機メーカーは、円安のおかげで利益が増えた。一方、発電の燃料を海外にたよる電力会社は、輸入代金がかさんで損失がふくらんだ。
ケン 円安ってなに?
――外国のお金に対して日本の円の価値が下がることだ。例えば、1ドルの価値が80円から100円になると、「円安ドル高」になる。80円で1ドル分買い物ができていたのが、100円ないと買えなくなる。円の価値が下がったわけだ。
でも逆に考えてみよう。外国で1ドル分モノを売った場合、80円の売り上げだったのが、円安になると100円になる。だから外国でモノを売っている日本の会社は売り上げが増え、もうけも増えるんだ。
ケン それは見かけだけの話なんじゃないの。
――企業のもうけは実際に増えているし、経済全体にもいい影響を与えている。ここ数年は円高が続き、日本で自動車やテレビをつくって外国で売っても、もうからなかった。会社はもうけが減ると、社員の給料を減らして、景気は悪くなる。去年、日本銀行が大量の資金を金融市場に流しこむ「金融緩和」を強めたのがきっかけで円安になり、そういう悪循環からは抜け出し始めている。
2008年にリーマン・ショックが起きた。銀行などの金融機関や企業の経営が悪くなり、世界的な不況になったんだ。その後海外では景気は徐々に回復していたのに日本はおくれていたけど、ようやく持ち直してきた。
ポン 景気の回復はいつまで続くのかな。
――去年の4月から今年の3月までの1年間は、1ドルが94円くらいから101円くらいまで円安ドル高になったんだ。最近は1ドル=102円くらいで動きがとまっているから、さらに円安が進んで、もうけが急に増えることは期待しにくい。
ジャン また不景気になるのは困るね。
――円安で会社がもうけた分を、社員に払う給料に回せば、みんながお金を使うようになって、景気が良くなる。
円安にたよらずにもうけを増やすため、それぞれの会社が努力していく必要もある。面白いゲームソフトのような、みんなが欲しがる新商品を開発して、たくさん売ればいい。会社のむだを無くして、効率的な経営をすることも大事だ。多くの会社が努力して成果を出せば、景気回復は一時的なものではなくて、長続きすると思うよ。
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