魚や海底資源とる権利も広がる
朝日新聞科学医療部 黒沢大陸編集委員
ケン 小笠原諸島で火山の噴火がまだ続いているようだね。
黒沢記者 西之島だね。去年11月に噴火が確認されてから半年以上も活発に活動しているよ。
ジャン 日本が少し広くなるんだね。他にも島ができればいいね。
黒沢記者 海底火山の噴火で島ができれば、国の土地が広がるだけでなく、その沖合で漁業や海底の資源を独占できる海域も広がるんだ。でも、どこでも噴火で新しく島ができるわけではないんだよ。
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手前がもともとあった西之島の陸地。奥の黒っぽい部分が今回の噴火で出た溶岩=6月13日、海上保安庁提供
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――西之島は東京の南1千キロにある。噴火は島の南東沖500メートルの場所で始まり、去年11月20日に海上保安庁の飛行機が新たな島ができていることを確認したんだ。
噴火が続き、出てきた溶岩が海をうめて、12月25日ごろに元の西之島とつながった。
ジャン ゴツゴツしてて住めそうにないけど、「岩」じゃなくて「島」なのね。
――なにを「島」というのかは、国際的な約束ごとで「自然にできた陸地で、水に囲まれていて、満潮の時でも水面上にある」と決められているよ。
西之島のそばでは、40年ほど前にも海底噴火で島ができて「西之島新島」ができたが、噴火が続いて西之島とくっついた。その後、波でけずられて新しくできた部分は、だいぶ小さくなった。
小笠原では硫黄島の近くに1986年に新しい島ができたが、2か月後に姿を消してしまった。
ケン 島として残るとはかぎらないのか。
――新しい島が残るかは、溶岩がたくさん出てきて、島がしっかりと固まるかによるんだ。今回の西之島の噴火は長く続いていて、今年5月には86万平方メートルの大きさになった。東京ドームの18倍の大きさだよ。
ポン すごーい。そんなに大きくなったんだ。
――こうした噴火が半年も続いているのはめずらしくて、専門家はもっとくわしく調べようとしているよ。噴火による地震などを観測して、海底火山がどうやって大きくなるのかを調べるんだ。
学問ばかりではなく、将来、人が住む地域に近いところで海底火山が噴火した場合の防災対策にも役立つかもしれない。
ポン 島がどんどん大きくなったらどうなるの。
――自分の国の土地は「領土」というのだけど、これが少し大きくなる。すると、その海岸から約22キロ(12カイリ)は自分の国の海「領海」になるんだ。
さらに、海岸から約370キロ(200カイリ)までは、漁業や、海底に資源があればそれを独占できるんだよ。
すでに西之島があるから多くは増えない。でも、小さくなっていた西之島がまた大きくなったので、権利を主張できる海域を失うおそれは減ったともいえるね。
ジャン 土地だけの問題じゃないのね。
――島はちっちゃくても、日本の面積よりも広い範囲で資源が得られるから、隣の国と、どっちの国のものかで争う領土問題がこじれるんだよ。
さらに南にある沖ノ鳥島は、小さな岩が海面に突き出ている島だから、波でけずれてしまうことを防ぐために、まわりをコンクリートで固めている。
ケン ほかにも海底火山で島ができるかな。
――火山は、地球のどこにでもできるわけではない。地球上をおおっている十数枚のプレートと呼ばれる岩板の境界付近や、ハワイのように地球の深くから熱い火山のもとが上昇してくるようなホットスポットと呼ばれる場所でできるよ。
ジャン 小笠原諸島はどっちなの。
――小笠原諸島は、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界にあたる位置にあるんだよ。
火山は噴火で災害も起こすけれど、きれいな風景を作ったり、近くで温泉がわき出したりもするし、領土が増えることもある。火山国ならではのめぐみだね。
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