本来は地方議員が調査に使う
赤井陽介記者 朝日新聞神戸総局
ポン 大泣きしている人がテレビに出ていて、びっくりしちゃった。
赤井記者 兵庫県議会の議員だった野々村竜太郎さん(47歳)だね。毎年600万円が出る政務活動費の使い道を問われて、記者会見で号泣した。そのようすが動画で国外にまで広がった。
ジャン 政務活動費って、最近ニュースでよく取り上げられるわね。どんなもの?
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不自然な政務活動費支出をめぐる問題で、兵庫県議会は各会派の代表者による会議を開きました=7日、神戸市どちらも©朝日新聞社
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――地方議員が議会で県民や市民のための活動をするために、調べものをしたり勉強したりするのに使うお金だよ。報酬とは別に自治体から支給される。
ケン 野々村さんは、何が問題だったの。
――まずは遠距離の日帰り出張。3年間で約350回も行ったとして、約800万円を受け取っていた。行き先は東京や福岡など遠いところばかり。11日間連続で兵庫県西宮市から東京と博多を行ったり来たりしたことになってる月もある。去年の9月には、大雨で特急が夕方まで運休していたのに、兵庫県豊岡市の城崎温泉に日帰り出張したことになっている。
ケン 何のために行ったの。本当に行ったの?
――会見では、「電車に無頓着なので覚えていない」とくり返した。切符を買った証拠の領収証も提出していない。
ポン それでお金がもらえちゃうんだ。
――うん。金券ショップでの切手のまとめ買いもめだつ。3年間で250万円。昨年度だけで176万円も買った。
ジャン こちらも使い道がわからないの?
――領収証には「切手代」とは書かれていなくて、実際に切手を買ったのかすらわからない。
ケン おどろきだ。
――同じく昨年度はクレジットカードを使って、スーパーで約530回買い物をしているけど、これも何を買ったか書いていないんだ。
ジャン それらについても説明していないの?
――会見では大声で「落選を重ねてやっと議員になった」「一人の大人として折り合いをつける」などと訴えたけど、お金の使い方についての説明はほとんどなかった。
ポン 説明しなくていいの?
――県議会は「ちゃんと説明しなさい。説明できないならお金を返して議員を辞めなさい」と勧告した。野々村さんは最後まで説明しないまま議員を辞めたので、県議会は警察に「犯罪かもしれないから調べてください」って告発したよ。
ケン ほかの議会は?
――政務活動費をめぐっては、全国の地方議会のあちこちで、おかしな使われ方がこれまでも明らかになっている。
ジャン みんなから集めた税金なのにね。
――そうなんだ。議員が提出した政務活動費の報告書や領収証は公開している議会が多いけど、コピーが禁止されていたり、そもそも少額の支出は領収証を出さなくてもいいルールになっていたりするところもある。
ケン それじゃ、チェックできないよ。
――兵庫県議会では17日から、ルール見直しのための議論が始まった。政務活動費の使い道がわかる書類をインターネットで公開する方針だ。
ポン いろんな人がチェックできるね。
――おかしな使い方をしている人は議長が注意するしくみも作る予定だよ。切手みたいに換金できるものを大量購入することも禁止しようという話になっている。
ポン 他の地方議会にとっても注目だね。
――そうだよ。大事なのは、自分の地域の議員がちゃんとした仕事をしているかどうか、一人ひとりが関心を持つことだ。それが議員たちの襟を正させる力になる。
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