水素で走る「究極のエコカー」
大内奏記者 朝日新聞経済部
ケン 燃料電池車がもうすぐ発売されるって聞いたよ。「究極のエコカー」って言われているけど、どんな車なの?
大内記者 トヨタ自動車が今年度中に売り出す車だね。ガソリンの代わりに、水素を燃料にして走るんだ。
ポン 燃料がちがうと、何がちがうの?
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イラスト・片桐満夕 |
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水素ステーションに入るトヨタの燃料電池車=14日、兵庫県尼崎市©朝日新聞社
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――ふつうの車は排ガスが出るのが当たり前だけど、燃料電池車が走る時に出るのは、なんと水だけ。地球温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)も出ないから、未来のエコカーとして期待されているんだよ。
ジャン なぜCO2が出ないのかしら。
――車に積まれた燃料電池に秘密があるよ。
水素は、空気にふくまれる酸素と結びつくと水になるんだけど、この時に電気もできる。このしくみを使って電気がたくさんできるようにしたのが燃料電池だよ。燃料電池でつくった電気でモーターを回して走るんだ。
ポン ふつうの車はどうなっているの?
――ガソリン車はガソリンを燃やして小さな爆発を起こし、その力でエンジンを動かしているんだけど、ガソリンを燃やすとCO2が発生してしまう。
ジャン ハイブリッド車や電気自動車もエコカーなんでしょ。
――エンジンとモーターを組み合わせたのがハイブリッド車。エンジンを使うから排ガスは出ちゃう。
電気自動車は大きな電池にためた電気で走る。排ガスは出ないけど、1回の充電で走れる距離は約200キロと短い。東京―熱海間をやっと往復できるぐらいだ。
ケン 夏休みで遠くまで行くには、ちょっと不安だよ。
――燃料電池車なら、1回の燃料補給で約700キロ走れるから、東京―名古屋間を往復できる。さらに、電気自動車の電池を満タンにするのに早くて30分ほどかかるけど、燃料電池車の水素なら3分でできるんだ。
ジャン 便利ね。だから「究極のエコカー」って呼ばれるのね。早く乗りたいわ。
――大きな課題が二つあるよ。一つは車の値段。まだ700万円もするよ。
ポン うわっ、高い! うちでは買えないんじゃないかな。
――国がお金を少し出すしくみをつくって、もっと安く買えるようにする方針だよ。2025年に1台200万円台で買えるようにするのが目標なんだって。10年以上たてば、燃料電池車に乗るのが当たり前になるかもしれないね。
ケン もう一つの課題は?
――燃料を補給する水素ステーションが足りないんだ。ガソリンスタンドは全国に約3万5千か所あるんだけど、水素ステーションはまだ実験用が17か所あるだけなんだよ。一つつくるのに約5億円かかる。約1億円のガソリンスタンドより高いんだ。
ジャン 燃料を入れる場所が見つからなければ不便だわ。
――国は、水素ステーションを15年までにさらに100か所増やす目標をかかげているよ。14日には、兵庫県尼崎市に日本で初めて、だれでも使える水素ステーションができたんだ。
ポン これからは燃料電池車のニュースが増えていくのかな。
――15年にはホンダが、17年には日産自動車も燃料電池車を売り出す予定。値段がいくらになるか、水素ステーションが今後どれだけできるか、注目だね。
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