ＥＵ寄り政府とロシア派が対立
石橋亮介記者 朝日新聞国際報道部
ジャン ウクライナでマレーシアの旅客機が撃ち落とされて、戦争みたいになっているね。いったい何が起きているの？
石橋記者 ウクライナの東部では今、ロシアに入ろうとして「独立」を宣言し、市役所などを占拠している武装勢力と、それに反対するウクライナ政府軍が戦っているんだ。ロシアは武装勢力に味方して、武器を与えたり戦闘員を送ったりしているようだよ。
ケン 旅客機もどっちかの味方だったの？
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| マレーシア航空機の機首部分はヒマワリ畑の中に落ちた。７月２０日、地元消防当局が調べていた＝ウクライナ東部ラシプノエ©朝日新聞社 |
――たまたま戦闘地域の上を飛んでいただけ。亡くなった２９８人は普通の人ばかりで、80人以上が子どもだった。争いとは全く関係ないんだ。
ポン ひどい。誰が、なんでそんなことしたの？
――ロシアや武装勢力は、ウクライナ軍が関係しているような言い方をし、アメリカなどは、武装勢力がウクライナ軍機と勘違いして撃墜したとみている。乗客の多くがオランダ人だったから、オランダを中心に国際調査団をつくって、誰がやったのかを調べ始めているんだ。
ジャン そもそも、なんで争いになってるの？
――ウクライナは、ロシアとヨーロッパの間にある。東部地域は隣のロシアと貿易が盛んで、ロシア語を話す人も多いからロシアびいきの人が多いんだ。反対に、ヨーロッパに近い中部や西部はウクライナ語が得意でヨーロッパびいきな人が多いので、東部と中西部の人たちが互いにロシアとヨーロッパのどちらと仲良くするかで意見の対立が続いてきたんだ。
ケン それで？
――去年11月、ウクライナのヤヌコビッチ大統領（当時）が、ヨーロッパの国々でつくる欧州連合（ＥＵ）との関係を強める協定の締結を取りやめた。怒ったヨーロッパ派の市民が首都キエフで政府に反対する大規模なデモをして、今年２月に大統領を追放。新しく、ヨーロッパ寄りの政府をつくったんだ。
ジャン ロシアやロシア寄りの人はおこりそう……。
――その通り。ロシアは３月、ロシア系住民が多く、ロシアの海軍基地もあるウクライナ南部のクリミア半島をロシアの一部にする「併合」を宣言。東部のルガンスク州やドネツク州でも、ロシア派の人たちが武器を持ち、「ウクライナから分かれてロシアに入りたい」と独立を宣言したんだ。一方、５月のウクライナ大統領選で当選したヨーロッパ派のポロシェンコ大統領は、武装勢力はロシアが支援するテロリストだと言って、武装勢力を追い出すため軍隊を総動員して戦っているんだ。
ポン 誰かがケンカを止めなきゃ。
――世界の国々が、戦闘をやめるよう訴えている。マレーシア機の撃墜事件については、世界の約２００か国の代表が集まる国際連合の安全保障理事会が、事件はひどいと非難し、誰がやったのかを徹底的に調べる国際調査を求める決議も採択した。さらに、ロシアに武装勢力の手助けをやめさせるため、ＥＵやアメリカなどが、ロシアをこらしめる経済制裁をどんどん強化している。この制裁には、日本も加わっている。
ジャン うまくいくのかな。
――ロシアは制裁に強く反発し、ウクライナへの天然ガスの輸出も止めたまま。溝は深まるばかりのように見える。ウクライナの人々がまた一緒に仲良く暮らし、ロシアともうまくやっていけるようにするには、世界の国々が協力し、話し合いで解決するように説得を続けていくしかなさそうだね。
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