宗教・建国めぐり民族対立続く
朝日新聞ドバイ支局 渡辺淳基記者
ジャン 中東のパレスチナ自治区ガザで、市民がたくさん犠牲になっているの?
渡辺記者 イスラエルの軍隊が7月にガザへの攻撃を始めたんだ。約1か月の間にガザでは1900人以上が死亡した。3分の2が武器を持たない市民で、子どもや女性もたくさん亡くなった。水道や発電所も壊されて、人口の3分の1近い約50万人が学校などに避難したよ。
ポン どうしてイスラエルはそんなことするの?
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がれきの中を歩く少年=5日、ガザ市東部イスラエル軍の空爆により黒い煙が上がるガザの市街地=8日どちらも©朝日新聞社 |
――6月にイスラエル人の少年3人が誘拐されて殺害されたのがきっかけだ。イスラエルは「パレスチナ人がやったにちがいない」と怒ってパレスチナ人を何百人も逮捕した。今度はパレスチナの子どもが殺害される事件が起き、ガザの武装組織がイスラエルを攻撃したんだ。そうしておたがいの攻撃がエスカレートした。
ケン イスラエルとパレスチナはなぜ仲が悪いの?
――いまのイスラエルの土地には、イスラム教徒であるアラブ人が住んでいたんだけど、19世紀後半から、ユダヤ教徒であるユダヤ人が「ここは神に約束された土地だから」と世界中から集まり、住み始めた。
ジャン それで?
――100年前の第1次世界大戦のころ、イギリスが戦争の味方を増やそうとして、ユダヤ人に「ここにイスラエル国を作っていいよ」と言っておきながら、アラブ人には同じ場所に「パレスチナ国を作っていいよ」と約束しちゃったんだよ。
第2次世界大戦後の1947年、国際連合がユダヤ人に有利な条件で建国を認めたから、アラブ人は怒って戦争を始めたんだ。
ポン 長い間けんかしているんだね。でも、パレスチナの人ばかりたくさん亡くなっているようだけど。
――イスラエルにはアメリカという強い同盟国がある。アメリカには力を持ったユダヤ人がたくさんいて、イスラエルにどんどん新しい武器を渡すようアメリカ政府に圧力をかけているんだ。今回もイスラエル軍はアメリカ製の戦闘機や戦車、軍艦をつかった。一方、ガザの武装組織は手作りのロケットをイスラエルに向けて撃つんだけど、ほとんどが外れたり、撃ち落とされたりしているんだ。
ジャン イスラエルはなぜパレスチナの中でもガザをねらい撃ちにするの?
――パレスチナ自治区は、イスラエルの東側にあるヨルダン川西岸と、西側にあるガザに分かれている。ヨルダン川西岸は「イスラエルといっしょに暮らしてもいい」という人たちが力を持っているのに対し、ガザは「イスラエルと戦って土地を取り返す」というイスラム組織ハマスが力を持っているんだ。イスラエルは「ハマスを倒すのは国を守るため」と考えるから、攻撃をやめないんだよ。
ケン でも、一般の市民がたくさん巻きこまれているのはあんまりだよ。
――イスラエルは「武器を持つ敵をねらっている」という。「市民にまぎれて『人間の盾』にしているハマスが悪い」という理屈だ。でも、ガザ地区はまわりをイスラエルの壁や軍隊に囲まれていて、陸も海も自由に行き来ができない。市民は逃げたくても逃げ場がないんだ。人々はどんどんイスラエルが嫌いになって、平和よりも「イスラエルと戦う」と言うハマスの人気が高まってきた。
ジャン 平和になることはもうないのかしら。
――いま、エジプトなど中東のアラブ諸国やアメリカが間に入って停戦が続くように話し合いをしている。どの国も一つだけでは生きていけないから、日本をふくめ世界中で「こんな悲劇をくり返すな」という声が大きくなれば、戦争を進めようとする人たちの力が弱められていくはずだよ。
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