文・谷内 悠 (東京大学大学院・人文社会系研究科)

 

 

哲学から宇宙や世界を探ってみる

 

イラスト・岡本詩子

(東京大学大学院・学際情報学府)

 

 夏休みも残り少しですね。中学の夏、私にとって一番いい思い出は、汗だくになってバレエの練習をしていたことです。あとは大好きな読書。
 その中でも衝撃的だったのは『ソフィーの世界』という小説でした。ソフィーという女の子の物語を楽しみながら、哲学の歴史をぜんぶ旅することができるすごい本です。
 そこで私は、今では科学が担当しているいろいろな分野を、昔は哲学が扱っていたと知りました。私は当時、宇宙のはじまりのことまで数式や実験でわかるなんて、科学って最高!と思っていたので、哲学と科学が一緒だった時代があったことにとても驚きました。
 それからもずっと科学が好きだった私は、高校は理数科に進み、大学も理系に入ります。でも、いつしか中学生の頃に芽生えた哲学への憧れが大きくなって、文系に転向し、今では哲学的な研究をしています。
 日本では、理系と文系がきっちり分かれていて、高校でどちらに進むか決めないとなりませんよね。だから大学に入ってからの文転はちょっと面倒な「みちくさ」でした。
 でも、後悔はしていません。私の追究したいことはブレていないからです。私は今も、科学者を目指していた頃と同じように、宇宙や世界について知りたくて研究をしていますし、哲学も科学と同じくらい魅力的な方法だと思っています。
 すべてのきっかけは、中学の夏休み……。みなさんもこの夏、なにかすてきな出会いはありましたか?

 

 

2012年8月26日号

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