文・谷内 悠 (東京大学大学院・人文社会系研究科)

 

 

科学と哲学 得意生かし世界を解明

 

イラスト・岡本詩子

(東京大学大学院・学際情報学府)

 

 科学と哲学は、今でも同じテーマに取り組むことがあります。私は科学から哲学的な研究へ移ったとき、そのことに勇気をもらいました。
  例えば、「世界はなにからできているのか」について。
  この世界は、ほんとうにいろいろなモノから成り立っています。地球があって、生きものがいて、人間がつくった人工物があります。
  こんなに違ういろいろなモノたちも、どんどん、分子や原子よりさらに細かく分けていくと、実はほんの数種類の小さな粒=素粒子になるということが科学でわかっています。
  そして素粒子は、私たちの日常生活とはかけ離れた振る舞いをする、ということも明らかになりました。
  例えば、素粒子の「ある」は普通に「机がある」というのとはまったく違います。確率○○%で「ある」としか言えないのです。うーん、不思議……。
  科学者たちもこの結果には首をかしげました。そして、このことをどうやって理解したらいいのだろう? そもそもある=存在するってどういうことだろう?といったことを考えざるを得なくなりました。
  存在について考えるのは、科学より哲学のほうが得意です。そのため今では、哲学者たちも難しい科学の勉強をして、素粒子の不思議に取り組むようになりました。
  こんな風に、科学と哲学が協力して、世界についてよりよく知ろうと頑張っているなんて! 素敵なことだと思いませんか?

 

 

2012年9月2日号

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