文・谷内 悠 (東京大学大学院・人文社会系研究科)

 

 

聖書に基づく創造論を科学の授業で?

 

イラスト・岡本詩子

(東京大学大学院・学際情報学府)

 

 みなさんは進化論って知っていますか? 進化論というのは、生きものは少しずつ進化してきた、例えばヒトはサルから分かれて少しずつ現在のような姿になった、という理論のことです。これは今のところ、生命の起源と歴史についての、科学的にもっとも正しい説明です。
でも、アメリカでは50%近くの人が、進化論を信じていません。なぜならキリスト教の聖書に「生きものは神さまが今の形でつくった」と書いてあるからです。一部の強く聖書を信じている人たちにとっては、ヒトがサルから進化したなんて、とても受け入れられないのです。
このような、聖書や神さまに基づいた、生命の起源と歴史についての考えを「創造論」と言います。
アメリカの創造論者たちは、それをできるだけ「科学っぽく」説明したものを、公立高校の科学の時間に、進化論と同じように教えるよう、運動しています。
でも、代替医療と同じく、創造論には、科学的に納得がいかないことがたくさんあります。しかも、科学的かどうか「もやっとしている」のではなく、かなりはっきりと「間違っている」ことが多いのです。
信仰の自由は大切ですが、「科学の授業」で科学的でない考えを教えるのはおかしいですよね。
実は韓国でも今年、創造論者たちのはたらきかけによって、高校の教科書から進化論の記述が減らされました。意外と身近なこの問題、みなさんはどう考えますか?


 

 

2012年8月19日号

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