文・大嶽晴佳 (東京大学大学院・新領域創成科学研究科)

 

 

卓球ラケット 強さの裏にあの構造

 

イラスト・岡本詩子

(東京大学大学院・学際情報学府)

 

 今回ご紹介する私が中学時代に好きだったものは「卓球」です。私は友達がいるから、という理由だけで卓球部に入ったのですが、やってみるとおもしろく、友達と憧れのラケットの話で盛り上がっていました。
  卓球の公式のルールで、ラケット本体の重さの15%以内なら木以外でもよいと決められており、木の板の間に炭素繊維のシートが挟まれているものがあります。私が使っていたラケットは、木の板が何枚も重ねられたもの。炭素繊維入りのラケットで打つと球がよく弾んで強い攻撃になると聞き、憧れていたのです。
  ただし値段は約2万円。その上使いこなすのが難しいということで、私には買えませんでした。
  でも、あのラケットに入っていた炭素繊維とは何なのでしょうか。炭素繊維は、見た目は髪の毛のような黒くて細い糸です。これを顕微鏡では見えないくらいミクロな世界まで拡大して見てみると、なんと炭素原子が正六角形状に規則正しく並んでつながっています。
  どの方向に引っ張られても強い六角形の構造といえば何かを思い出しませんか? そう、前回紹介した、軽くて丈夫な「ハニカム構造」になっているのです。だから、ラケットに炭素繊維を挟むと硬くなり、球が弾みやすくなるのです。
  ちなみに、この炭素繊維を樹脂となじませたシートを何枚も重ね、窯で焼くと、炭素繊維強化プラスチックができます。これは飛行機の材料にもなるんですよ。


 

 

2012年10月21日号

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