文・大嶽晴佳 (東京大学大学院・新領域創成科学研究科)

 

 

お互いの良さで欠点カバーする合金

 

イラスト・岡本詩子

(東京大学大学院・学際情報学府)

 

 今回ご紹介する私が好きなものは「フルート」です。中学では運動部でしたが、幼い頃から音楽が好きだった私は、高校で吹奏楽部に入部し、フルートを吹くことにしました。
 フルートにはずっと憧れていたので、うれしくて早速、自分用の楽器を買うことにしました。銀でできたフルートを買おうと思っていたのですが、値段を見てびっくり。銀製は高すぎたので、結局、洋銀製にしました。
 洋銀とは、ニッケル・亜鉛・銅でできた合金と呼ばれるものです。銀がまったく入っていないことに私は不満でした。
 しかし、合金は数種類の金属を混ぜて作るため、大変使いやすい材料です。金属がそれぞれ持っている欠点をお互いカバーして、丈夫になったり、さびにくくなったりします。
 合金はいろいろなものに使われます。電気ストーブのニクロム(ニッケル+クロム)、はんだ付けのはんだ(スズ+鉛)、アルミニウム合金(アルミニウム+亜鉛+銅+マンガンなど)。
 このうちアルミニウム合金は、アルミニウムの軽さと亜鉛や銅の強さを合わせたもので、前回ご紹介した炭素繊維強化プラスチックが開発される前の代表的な材料で、今空を飛んでいるほとんどの飛行機はこれでできています。
 洋銀も軽くて丈夫で、扱いやすい材料です。今は銀のフルートを吹いていますが、それぞれ良さがあると感じます。どんな素材であっても、私はフルートが大好きです。


 

 

2012年10月28日号

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