文・谷内　悠　（東京大学大学院・人文社会系研究科）

魔法みたいにできる？できない？

イラスト・岡本詩子 （東京大学大学院・学際情報学府）

　今の科学は、占いや魔術とはお別れしましたが、その半面、昔の人が見たらまるで魔法のようなことができるようになりました。
　 金ではないものから金をつくり出したり、月へ行ったりできますし、スマートフォンなんて魔法のつえよりすごいかもしれません。
　 さらに、今はまだできないけれど、いつかはできるかもしれないこともあります。例えば、遺伝子の研究をもとに、真剣に不老不死を目指している人だっているのです。
　 科学の力で、もっともっと魔法みたいなことができるようになる。宇宙旅行だってしてみたいし、『ドラえもん』の世界も夢ではないかも!?
　 そんなファンタジックな憧れもあって、私は高校は理数科に進学しました。ちょっと不純な動機でしょうか。でも、もやっとした科学の歴史を考えると、アリだと思います。
　 ただ、どんなに科学が進んでもできないこともあります。私たちは、今生きているこの世界のさまざまな法則に縛られているからです。
　 例えば、地球に重力があるから、私たちはふわふわ浮かないでいられますが、その分、機械のような種や仕掛けなしで空を飛ぶことはできません。
　 科学は、そういった法則を調べて、私たちが生きているこの世界ではなにができてなにができないのか、ということに区別をつけています。残念ながら、魔法のように「なんでもあり」というわけにはいかないのですね。